# 部分フォントしたい(`\usefont` / `\usekanjifont`) ```latex % 欧文フォントの変更 {\usefont{<エンコーディング>}{<ファミリー>}{<シリーズ>}{<シェープ>} テキスト} {\usefont{T1}{ptm}{m}{it} これは Times Italic のテキスト} {\usefont{T1}{phv}{b}{n} これは Helvetica Bold のテキスト} % 和文フォントの変更 {\usekanjifont{<和文エンコーディング>}{<ファミリー>}{<シリーズ>}{<シェープ>} テキスト} % 和文フォント {\usekanji{和文エンコーディング}{ファミリー}{シリーズ}{シェープ} 文字列} {\usekanji{JY1}{mc}{m}{n} これは(JY1 / 明朝体 / 標準 / upright) のテキスト} % pLaTeX {\usekanji{JY2}{gt}{b}{n} これは(JY2 / ゴシック体 / 太字 / upright) のテキスト} % upLaTeX {\usekanji{JY3}{gt}{bx}{n} これは(JY3 / ゴシック体 / 極太字 / upright) のテキスト} % LuaLaTeX ``` `\usefont`で欧文フォント、 `\usekanjifont`で和文フォントを 部分的に変更できます。 フォントの変更には次の5つの要素が必要です。 1. エンコーディング 1. ファミリー(=書体) 1. シリーズ(=ウェイト) 1. シェープ 1. サイズ :::{note} LaTeXの標準コマンドに、それぞれの要素を変更できるコマンドがあるため、 `\usefont`などを直接利用する頻度は少ないと思います。 ただ、フォント変更の仕組みを理解するために、知っておくとよいかなと思って、 このページを作成しました。 ::: :::{note} ドキュメント全体のフォント設定は、 [fontspecパッケージ](./latex-fontspec.md)や [luatexja-fontspecパッケージ](./latex-luatexja-fontspec.md)を 使うのがお手軽です。 ::: ## エンコーディング フォントの**エンコーディング**とは**TeX内部の文字マッピング**のことです。 UTF-8やシフトJISのようなファイルのエンコーディングとはまったく別物です。 欧文エンコーディングには`TU`(TeX Unicode)、`T1`、`OT1`(Old T1)があります。 和文エンコーディングには`JY1`(pLaTeX)、`JY2`(upLaTeX)、`JY3`(LuaLaTeX)があります。 | エンコーディング | 文字数 | |---|---| | `OT1` (Original TeX) | 128文字(7bit) | | `T1` (EC encoding) | 256文字(8bit) | | `TU` (TeX Unicode) | たくさん | | `JY1` | 約6800文字 / JIS X 0208準拠 / pLaTeX | | `JY2` | 約10000文字 / JIS X 0208 + 一部0213 / upLaTeX | | `JY3` | 約12000文字 / JIS X 0213準拠 / LuaLaTeX / XeLaTeX | 最近のLaTeXはUnicodeに対応しているので、 気にすることなく`TU`(と`JY3`)エンコーディングを利用すればよいです。 ## フォントのファミリー フォントの**ファミリー**とは**書体**のことです。 フォント名からわかる基本的な分類で、文章全体の雰囲気を決める要素です。 | コマンド名 | 書体 | 欧文/和文 | |---|---|---| | `\textrm{}` | セリフ体 / ローマン体) | 欧文 | | `\textss{}` | サンセリフ体 | 欧文 | | `\texttt{}` | タイプライタ体 / モノスペース体 | 欧文 | | `\textmc{}` | 明朝体 | 和文 | | `\textgt{}` | ゴシック体 | 和文 | | `\textmg{}` | 丸ゴシック体 | 和文 | ## フォントのシリーズ フォントの**シリーズ**は**太さ**のことです。 **ウェイト**と呼ぶこともあります。 文章の視認性や強調の度合いを調整できます。 | コマンド名 | シリーズ | |---|---| | `\textlt{}` | Light | | `\textmd{}` | Medium (デフォルト) | | `\textbf{}` | Bold | | `\textbx{}` | Bold Extended | | `\texteb{}` | Extra Bold | ## フォントのシェープ フォントの**シェープ**とは**字形**のことです。 **スタイル**と呼ぶこともあります。 [\emph{}コマンド](./latex-emph.md)のように、欧文では強調に*italic*を使用します。 和文フォントは*イタリック*に対応したものが少ないため、あまり使わないかもしれません。 | コマンド名 | シェープ | |---|---| | `\textup{}` | upright体 / 立体 | | `\textit{}` | italic体 / 斜体| | `\textsl{}` | slanted体 | | `\textsc{}` | SmallCaps体 | :::{note} 指定したフォントがイタリック対応していない場合は 通常フォントを強制的に斜めにした**擬似イタリック体**が使用されます。 [fontspecパッケージ](./latex-fontspec.md)で `FakeSlant`オプションを使うことで擬似イタリックを明示的に適用できます。 :::